失われた記憶8(変態さん)


「いいか?公の場はもとより、記憶が戻るまでは俺の前で絶対に脱ぐなよ?」
「はぁい!耐えます…!本当なら俺の全てをみつめてほしいんですけどぉ…!やっぱり最初からは…ね?裸ベストもいいですけど、メイドさんも…!あ、暗部とかどうですか!」
「何度も言うが、周囲の人間への襲撃も勿論禁止だ!」
「はぁい!間男が近づけないくらいいつでも側にいまぁす!ぴったりみっちり奥の奥まで俺でいっぱいにしたい…!」
「それに当然のことだが卑猥な行為も禁止だからな!」
「…はぁい!」
「その間はなんだその間は!?いいか?尻をもむのも前をもむのもいきなり抱きつくのも当然不可だ!それにな、なめたりするのもだな…」
「えぇえええ!?そんな…!し、しんじゃいます…!イルカせんせのお尻に触れないなんて…!ふ、踏まれるのも我慢してるのにそんな…!」
最後のダメ押しをしてるってのに、やっぱりこの有様か。
あれだけ復唱させたが…具体的にどんな行為がダメなのかってのももうちょっと具体的に盛り込むべきだったか…!?
普通の上忍として振舞うってのがそんなに難しい条件だとは思えないんだが…まあコイツ駄犬の変態だしな。
これまでだって上忍としてやってきたはずなのに、どこでどうしてこうなったんだか知らないが、私的な事情で里の威信を損なうわけにも行かない。
せめて最初の1日くらいはゆっくりできるだろうと踏んだのは甘かったようだ。
この分じゃ押し倒して入れてないから大丈夫くらいのことはいいかねん。
…すまたがどうのって騒いでた時期もあったからな…。散々じらすはかけられるはでくったくたになってるってのに、結局我慢できないとか喚いてで入れてくるし…!なんだったんだ…!
ってだめだ!こんなことばっかり考えてたら俺までダメになる!
普通の中忍としての生活を守るんだ…!
「貴様を忘れたら、俺にとってお前は見知らぬ人間だ。それなのにそんなことするなんて…浮気も同然だよな?浮気するような駄犬はいらんから当然捨てる。二度と会うことはないだろうな」
「う、浮気!?そんなこと絶対にしません!」
詭弁もいいところだが、浮気という単語には鋭敏に反応した。
流石駄犬だ。普段から間男だの泥棒猫だの、普通使わないだろって単語を連発するだけある。
打ちひしがれる駄犬に分かりやすいように言い聞かせるはずだったが、駄犬は駄犬だから駄犬なんだということを忘れていた。
「ってことだから、お前は普通の上忍として…んむっ!あ、な、なにしやがる!」
「浮気なんてしないってことを全身で表現します!俺の愛…!受け取ってください…!」
「馬鹿野郎!ここどこだと思ってんだ!」
火影の執務室前でおっぱじめようとするとかどう考えても頭がおかしい。
…いや元々おかしいのはわかっちゃいるんだけどな。常軌を逸しすぎだろ。
俺に関することだと元々あるかなしかの正気が完全にすっ飛ぶからな。
「あ、あぁ…!も、もっと踏んで…!」
「ちっ!いいか?三代目の前で粗相するなよ?まず服を着ろ!」
とりあえず自分も乱れた服を外見だけでも整えてやった。
下半身の乱れ具合に関しては気づかないことにする。なんでこう俺を見ただけで…みなれたくないもんすっかり見慣れちまったよ…。天国の母ちゃんと父ちゃんが知ったらどう思うか…。
一瞬嘆きの海に沈みそうになったがそこはそれだ。
とっととやれることからやらないとな。
「大丈夫です!記憶を失っても俺の愛をたっぷり溺れるくらい注ぎ込みます…!う、浮気なんてしないって全身でしっかりたっぷり伝えますから…!」
どうもわかってない気がするが、これ以上は諦めるしかないだろう。
賭けに勝つこと。まずはそこからだ。
「強引にやったりしたら、多分俺は自害するぞ?最低でもそこは守れよ?」
自分で記憶を消したがったくせに、忘れられちゃうの怖いなどと涙ぐみはじめた駄犬のことはさっぱり理解できんが…。
とにかく少しでも平和を取り戻すために、この賭けに負けるわけには行かないんだ。
俺の名を呼びながらぐずぐず泣く顔を見たときにちょっとだけ胸が痛んだ気がしたのは、全力で気のせいってことにしておいた。


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変態さん。
ねむいようねむ…
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