平穏な日々の終わり(適当)


そうなりたいか、ってのは大事なことだ。
たとえば芸能人や大名なんかは、確かに凄いんだろう。
でもどんなにすごいと言われている人であっても、俺はそうなりたいわけじゃない。
誉めそやされる分だけ厄介事も付きまとう。
特に忍は名前が売れることがすぐ様死に直結しかねない。
小市民の幸せってのも悪くないもんだ。
実力がない事を歯がゆく思うこともあったし、修行を欠かすようなことはない。
だからって面倒ごとに関わるのなんて真っ平だ。
そりゃ自分の忍道に反することなら全力で抵抗するけどな。それは必要なことであって、余計なことってわけじゃないから。
すっぱい葡萄だといわれりゃそれまでなんだけどな。
華々しい人たちの影には、常に厄介事が付きまとう。
ガキのころから三代目を見ていてずっとそう思っていた。
本当になにもわかっていないチビの頃には不遜にも代わってあげたいと思ったこともあったし、今は支えたいと思ってもいる。
本っ当に色々と小さいものから大きいものまで厄介事がひっきりなしに舞い込むのが常だからな…。
そんな俺が平穏無事とか、平和とか、ともすればつまらないといわれそうなものを望むようになったのはある意味自然な話だと思う。
…で、だ。そんな俺にとって、高名な同性の上忍からの告白降って湧いた災難でしかなかったんだよなぁ…。
「好きなんです」
真剣な瞳にウソをつきたいわけじゃない。
でも、どうしたらいいんだ?
「あの、ですね…!?」
「ずっと、あなたが好きでした。これからも」
熱っぽく囁き、うっとりとした目は心なしかぎらついて見える。
見た目も派手だが中身も派手な人だったらしい。実力も派手だけどな。ある意味。
ビンゴブックなんて恐ろしいものに載っているくらいだから。
「ですから、その!」
「家事はそれなりにできます。こんな話をするのもなんですが、貯金もたっぷりあります。夜の方は…その、男とってのはそんなに経験がないんですが、努力します」
口を開く隙さえ与えてはくれないらしい。
そんなにまくし立てられたって困るんだよ!
「あ、あの…!」
「ああ、大事なことを忘れてました。…出来るだけ死なないようにします」
だから、俺を好きになって?
泣きそうな顔でそんなことを言うから。
「だーかーらー!俺の話を聞け!ここは受付です!こんなとこでなんてこといってるんですか!」
「…はい…」
途端にしょぼくれるのだから始末に終えない。
告白ってのはもうちょっと秘めやかなもんだろう?普通。
なんだってこんなことしでかしてくれたんだ…。
それに、そんな顔しなくてもいいじゃないか。
「俺も、好きです」
まあ、その。うん。
要はそういうわけだから。
でもだな。ここは受付なんだよ。平和な中忍の俺にとっては職場で、この人にとっても普通は粛々と報告書を提出するべき所なんだよ。
間違ってもこんな…好奇の視線をいっせいに向けられるような行為はすべきじゃない所だってのに!
鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたものの、男はやはり上忍だった。
「好きです…!大切にします…!」
しがみ付く力は強く、その上この場で結婚でもしそうな勢いだ。
こんな目立つ告白してくれやがって!
…本当は今日これからこじんまりした個室しかない居酒屋に呼び出して、俺から告白するつもりだったのに。
コレだけ派手にやったら後で大変なことになるだろうなぁ…。
深い深いため息をつきながら、俺は初々しい恋人を抱きしめたのだった。
同僚に愚痴ったらお前も十分派手だと真顔で言われたり、それを告白されたと勘違いしたカカシさんが嫉妬されてその夜初めて襲われて、どうやらお互い立場を勘違いしていたらしいことが発覚したりといろいろあったんだが…。
今の所、無駄に高名な上忍の恋人生活は順調だ。
夜に関しては納得できない所があるんだけどな…!気持ちイイのが癪だけど!


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適当。
あほなものを間に挟む。
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