告白(適当)




「ね、こっちきて?キスして?」
ころりとたたみの上に転がっているだけなら無害なのに。
こうしてにんまりとどこぞの絵本の猫のように笑って懐いてくるのが困る。
この男は危険すぎる。
見た目だけはいいからと放っておいたらあれよあれよという間に体を好きにされ、呆然としている間に告白なのか所有宣言なのかわからないような言葉を告げられ、気付けばすっかり心まで持っていかれている。
…お前が来いといえるくらいなら、こんな理不尽な関係を続けていない。
好きとは言っている。それも四六時中。纏わりつくように身を寄せてくることもあれば、こうして離れた所からわざと声を掛けてくることもある。
こっちに来いといわれたら、俺はそれを拒めない。
体から慣らされたってのもあるんだろうか。
…ぞっとする。
この男にここまで侵食されてしまったことにも、それでもこの男を叩き出せないだろうことも、それから。
「おいで」
なんて甘い声。差し出した手を俺が取ることを疑いもしない。
この不公平感!
なんだよ。何でこんなに俺ばっかり。
「カカシさんのばーか」
どうせ気まぐれな上忍が、目に付いた毛色の変わった中忍で遊んでいるに過ぎない。
好きだっていっちゃいるけど、俺だけだなんて話はそういえばしたことがないし、任務を終えればその腕前への賞賛と、それから艶聞までセットで帰ってくる男だ。
何が嫌って、こんな女々しい自分が一番嫌だ。
…おいていかれてしまうかもしれないことが恐くて、一度も好きだと言えていない。
自信に満ちた態度が腹立たしくて。
告げてしまったら戻れない気がして。
そんなことばかり考えている俺と、俺を空き放題に振り回すこの男の、どっちが卑怯者なんだろう。
「ふふ。かーわいいの。ねぇ。好き」
頬を啄ばまれる。不埒にも腰に回された手は既に裾からしのび込んで胸元をまさぐり始めている。
もう、諦めていいだろうか。
だって、この男には絶対に勝てる気がしないんだよ。多分、一生。
「…好きとか、言うな。ああくそ…!」
「はいはい。わかってるからいいの。でも、死ぬ前に一度位は聞かせてね?」
そんなことを言うから、だから。
「俺だって好きだってんだ畜生。俺より先に死んだら化けて出てやる。そんなこと言いながら笑うな」
「それおかしいでしょ。色々」
くすくす笑いながら抱き寄せられて、あとはもう目くるめく夜がやってくる。
もう、いい。しょうがない。こんなのに惚れた俺が悪い。
「すきだ」
唇を重ねて小さく囁く。一度言ってしまえば諦めがつくというか、溢れかえっていたものが堰を切って流れ出してしまう。
「そんなに急に一杯言わないで。幸せすぎてやり殺しちゃったらどうするの」
「アンタだって一杯言ってたじゃないか」
ずるいと詰れば熱くなった腰を押し付けられて、心地良さに陶然とした。好きにしたらいいんだ。それに俺だって好きにしてやる。最中はいつだって熱に浮かされたみたいになって碌に動けちゃいないけど、せめて今ぐらいは。
もっと触れ合いたい。我慢はもう止めた。欲しい物を我慢しなくたって、この男はしたいようにするんだから一緒だ。
「俺はいーの。全身全霊で愛しちゃってますから」
ちゅーして?なんて舌っ足らずな口調で強請るから、濃厚なヤツをいっぱつかましてやって、そしたら主導権はあっという間に奪われてしまって、陶然のことながら朝までたっぷりいちゃついた。…というか、貪られたと言うか。
「あー…燃えました。気持ちよかった!」
「そ、です、か」
比喩でなく腰が抜けた。出勤はできそうにないが、今日の業務は受付だけだし忙しい時期でもない。好き放題にしたくせにいたって元気な男が、嬉々として急病の連絡をいれてくれたから、そう大した問題にはならないだろう。
ああ、爛れている。
そう思う。…思うのに。
「もうね。俺の中はアンタで一杯ですよ。どうしてくれるの?」
にやにやしながら詰るような言葉を投げかけられても、こっちこそ聞きたい。
どうしたらいいんだ。こんな最低で最高に幸せな朝は初めてだ。
「アンタでいっぱいですよ。俺の方こそ」
「そうですねー!いっぱい出しちゃったもんね」
…そっちじゃないといいたいが、舞い上がっているらしい男は聞いちゃいない。きわどい所をなでられたときは警戒したが、夜明けのほうじ茶ってのもありですよねーなんて鼻歌混じりに茶だの飯だのを仕度しているようだ。
まあ、いいか。色々と考えるだけ無駄なんだとわかった。
好きなんだ。それだけでいいじゃないか。
「カカシさん」
「ん。なぁに?イルカせんせ」
振り返った男が割烹着姿名ことに少しだけ笑って、それから。
「好きですよ」
そう告げた瞬間そのままもつれ込むことになったんだが、幸せだからまあいいかってことにしておいた。


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適当。
お砂糖たっぷりてんこ盛りうっすら変態成分のせ。
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