ごちそう2(適当)



知り合いの上忍を拾った。
全身血まみれで、こんな状態じゃもしかしたらと思うとぞっとしたってのに、本人は大丈夫だと言い張る。
汚れるとかそんなことばかり気にするくせに、思わず子どもにするように撫でたら甘えるように目を細めた。…それから、しまったって顔をして、慌てたようにもがくから。
その仕草があまりに痛々しくて、我慢できずに連れ帰ってしまった。
勿論病院にも連れて行って、殆どが返り血でチャクラ切れを起こしてるだけだから入院しなくてもいいといわれて、その辺の細かいことは本人に伝えず傷の状態だけ教えて適当に誤魔化し、失敗したーって顔をした後すぐに大丈夫ですよとにこにこ笑い出したのを担ぎ上げた。
冷静になったらこの人は多分逃げる。今は弱っていて判断力も落ちてるし、その上チャクラ切れを起こしてるから、俺なんかに捕まりかけてるのに迷惑をかけたことを不安がるあまり気付かないでいるだけだ。
つまり。チャンスは今だってことだよな?
下心なんてありありだ。今がチャンス。俺の勘はこういうときには外れない。
ベッドに放り込んで、不安がる犬がきゅんきゅん鳴いてるみたいに鼻を鳴らして謝り続けるのを布団をかぶせて遮って、ついでに隣に潜り込んだ。
嫌がるかなと思ったけど、チャクラ切れで冷え切った体には丁度良かったらしい。
ほっとしたように体から力を抜いて、瞳を閉じた。
間近でみても器量よしだってのはよくわかる。
普通はこう…粗が見えるもんだが、この人の場合は本当にイキモノなのかどうか不安になるほど整った顔をしていて、ついでにチャクラも補充してもらったからか肌もつやっつやだ。
左目をまたぐように残る痕だけが、確かに作り物なんかじゃないと教えてくれる。
起きてるときは凄まじく庇護欲をそそるのに、眠っていると陽だまりに寛ぐ野生の獣のようで、どこか近寄りがたい雰囲気だ。
まあ、逆に触りたくなるんだけどな。くっついてくるのを役得とばかりに髪の毛の感触やらすべすべのほっぺやらをしっかり堪能した。
上忍だし、いくら動けなくても目が覚めてよさそうなもんだが、弄り倒してもすっかり眠りに落ちた人の瞳は、朝になるまで開くことはなかった。
それはそれで心配したんだけどな!具合が悪いのかと思うと一睡も出来なくて、起きるなり胸が締め付けられそうなくらい幸せそうに笑うからそれでまた落ち着かなくなって、思わずもりもり飯を食わせてしまった。
そんなこんなでうやむやのうちに我が家に上忍を住まわせることに成功した訳だ。
俺のことはどう思ってるか分からないが、どうやら俺の体温だの照れ隠しもあって普段より三割り増しくらいざっくりした扱い方だのは気に入ってくれたらしい。
触れると気持ち良さそうにするから思わず世話を焼くのが癖になった。
やりすぎて嫌われるのも恐いんだが、むしろ構い倒すと嬉しさを隠し切れないみたいで、いつもは飄々とした表情を緩ませて機嫌のいい猫みたいにうっとりするから、ついつい甘やかしちゃうんだよなぁ。
最初の頃は甘えた後罪悪感に苦しめられてますって顔するから困ったもんだったが、最近じゃ幸せですって顔中に大書きしたみたいにくっついてくるからどうも調子が狂う。
もうでろっでろに甘やかして俺なしで生きていけないくらいにしたくなる。
…ずっと狙ってただなんて、この人は知らないんだろうけど。
今日も今日とて膝に懐く上忍がかわいらしい。
全部俺のモノにしたら多分上層部は恐慌をきたすだろうし、この人だって流石にやられるとなれば抵抗するだろうから中々思いきれないんだが…。だって嫌われたら生きていけないじゃないか。
ずっと俺のでいてくれないかなぁ。
時々すごく寂しそうな顔をしてるのをみたときから、実の所俺はこの人が欲しくてたまらないんだ。
膝を抱えて自分だけはがんばりつづけなくちゃいけないみたいに悲壮な覚悟を勝手に決めて、でもだから耐え切れなくて死にたがりだ。
俺の大事な人。…どうやったら俺のモノになってくれるだろう。
見込みがないとは思わない。俺じゃなきゃ駄目って訳じゃなくても、俺を気に入ってくれてるのは態度で分かる。
だってそうだろ?上忍なのに俺の隣で熟睡できるってことは、それなりに安心できる居場所に慣れてるってことなんだから、全然全く望みがないとは言えない…はずだ。
色恋沙汰での駆け引きも、そもそも男にほれたのも初めてなのが悔やまれる。不器用な自分にできることは、多分そうそう多くはない。
諦めきれない以上、とにかく努力するしかないだろう。たとえばこうして頭を撫でるとか風呂に…ああでも、最近一緒に入ってくれないんだよな…。前は動き辛かったせいもあってか髪の毛だってなんだって洗わせてくれたのに。
「ごはん。作りますね」
走行しているうちに、欲しくてたまらない人は名残惜しげに頬ずりして台所に行ってしまった。
もうちょっと撫でていたかったんだけどなー…なんて落ち込みつつ、次への作戦を練っていたら…急展開が待っていた。
ごちそうと同時に据え膳まで用意されてるなんて最高だ。
愛なんて売るほどある。溺れさせる自信があるくらい溢れかえっていますとも!もちろんこの人限定だけどな!
渾身の口説き文句に見せてくれた笑顔は、それこそ目が瞑れるほど眩しかった。
で、だ。まあその。そういうことになったんだよ。うん。
「気持ちイ…!」
「や、ぁ…!中、ん、あつい」
見上げる先でうっとりと目を細めながら快感を追っている。腰を押し付けて中を抉りながら、キラキラと輝いているのは髪だけじゃなくてその瞳もだ。
舌なめずりして俺を食らっている。注ぎ込まれた熱に熔かされて、縋りつくのが精一杯だ。
予定外にも程があるんだが、そういや言うまでもなくこの人も男だった。
風呂に入ってベッドに一緒に潜り込んだ所までは予定通りだった気がする。
そういえば女性相手ならまだしも男相手にやったことないぞと一旦停止したときに、既に勝負はついていた。
「イルカ先生」
ふぅっと深く息を吐いて、それから…それからはもう凄かった。
噛み付くようにうなじに顔を埋めた人に歯を立てられて、本能的に肌を粟立てたときには唇をふさがれていて、着込んだパジャマも一枚300両の勝負パンツもベッドの下に放り投げられていた。
何が起こってるのかわからないながら、もう相手が正気を手放しているらしいことは分かって、一切の躊躇いを捨てた姿にどうしてか安心した。
怯えた顔をしていない。不安がってもいない。それに気持ち良さそうだ。
なら、イイかと思ってしまったときには、後に指が深々と埋め込まれていて、熱心にそこを弄りながら咥えられて、あられもない格好をしていることに多少の抵抗を感じたものの、身じろいだ途端に不安そうな顔をされて動けなくなった。
「いや?」
多分頷けばこの人は二度と俺に触れないだろう。全てをあきらめたような顔で、きっと俺も諦める。
そんなの、許せるか!
「もっと」
…まあだからってこれはどうかと後で思った。火がついたみたいに行為の激しさが増したから。
言い訳をさせてもらえるなら、何言ったらいいかわからなかったんだよ! 大丈夫って言うのもなんか変だろ?いやじゃないっていうのも、この人が遠慮しそうだった。
それに、その。比喩でなく腰が蕩けそうになるほど気持ちよかったのも事実で。
結果が、この状況だとしても俺は受け入れているからいいんだ。
足は立たないわベッドは丸洗いできるならしたいほどお互いの吐き出したものでぐちゃぐちゃで、あらぬ所は熱を持って痛み、多分今日一日使い物にならない。
「うー…」
「ごめんなさい」
「あやまんないでいいんですよ。やりたかったのは俺もだし」
ああ、声もだな。
箍が外れたのは多分俺も一緒だ。そうじゃなきゃこんなにがったがたになるまで励んだりしない。途中で止めろといえば、この人は自分にクナイをつきたててでも止めただろう。そういう人だ。
「うん」
ちょっとしょぼくれてんのは気になるが、まあ、いいか。
隠し切れない喜びを押し殺そうとしているのが分かるから。
ほっぺたなんてつやっつやで緩みまくってるもんな。…まあ多分俺もだが。
「シーツ、あとで、もうちょっとねて、から…」
「ん。ちゃんときれいにしますね」
ぎゅうぎゅう抱きつかれて、後からどろっと溢れたのを感じたが、そこは気合で誤魔化した。
これで、多分この人はもう二度と俺から逃げられない。責任取れっていえるし、そうしたら上層部にだってなんだって喧嘩売ってでも俺を手放さないだろう。
それを俺が望んでいると知ったら、何をしたって揺らがない。
「へへ。ざまぁ、み、ろ…」
不幸面はすっかり鳴りを潜め、変わりに喉を鳴らしそうなほどご機嫌な生き物がいる。
側にいる事が当たり前になって、いないときに不安になるほどべったべたに甘やかしてしまおう。
「イルカせんせ?」
「こっちきなさい。そんで寝ますよ」
鼓動が早い。そして性懲りもなく芯を持ち始めているモノに関しては…後で手加減ってものを覚えてもらわなくては。
「好き。もう俺のモノ」
くふんと鼻を鳴らして擦り寄る生き物を抱きしめてほくそ笑んでおいた。
あの時、なりふり構わずに手を伸ばしてよかったなぁと思いながら。


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適当。
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