晩夏3(農家)


これの続き。


獣のような視線でイルカ先生を見つめ続けつつ、優秀な俺の手はあれほどあった野菜の山をいつの間にか綺麗に切り終わっていた。
よそ事を考えてても、意外と何とかなるもんだよね?
それを仕込み中のイルカ先生のところまで持っていったんだけど…。
視線合わせてくれないし、こっちを見て欲しくて背後から抱きついたら耳まで真っ赤にして恥ずかしそうにしてるし!
「こっち、見すぎなんです…!」
あー、視線に気付いてはいたのね?
普段なんていうか…ちょーっと天然入ってて、そこがまたかわいいんだけど、男心を分かって欲しいことも多かった。でも今なら多分わかってくれるよね!
「イルカせんせ…ねぇ、今日は…」
よし!このままそっといい雰囲気にもって行って、パーティの後のパーティっていうか…いちゃぱらの約束を…!
「あ、アクが!それにそろそろ野菜炒めておかないと!」
色っぽい雰囲気はイルカ先生のお料理魂に一瞬で払拭された。
く…!美味しいカレーも勿論楽しみだけど、俺がなにより食べたいのはイルカ先生なのに…!
「俺、手伝います!」
「お願いします!こっちのなべでコレ炒めて、それから…」
「お手伝いしますから…後でご褒美下さいね!」
ふざけつつ本気10割でそう告げると、イルカ先生は…小さな小さな声で「はい…」っていってくれたんだよね!
もうそれだけで天にも昇っちゃいそう!
舞い上がった俺は、イルカ先生が溜息とともに何かをいったのを聞き逃した。
「最近お預けさせてるもんな…。かわいいからってやりすぎだったか。…ちょっとだけなら」
*****
煮込みながら隙を見てそっとくっついたり抱きしめたりキス…までは流石に無理だったけど、とにかくいつの間にか魔法のように大量のカレーと、それからサラダとかフルーツパンチなんかまでできていた。
やってきてすぐにその山盛りの料理に目を輝かせた子供たちは、それらを獣のように頬張っている。
大なべ一杯あったカレーはあっという間に空になり、自分の分を確保するのが精一杯だった。あ、もちろんイルカ先生の分もしっかり確保したけどね?お代わり含めて。
「うめぇ…!うめぇってばよ!」
「おかわり!」
「もうないよー」
「ええ!?あ、でもまだデザートが…!」
食べ盛りのケダモノたちは目を爛々と輝かせてフルーツポンチに獲物を切り替え始めている。
「これスイカが!面白い形してるってばよ!」
「ドベ。振り回すな!」
「きゃー!かわいい!これってカカシ?それにイルカだわ!」
「イルカ先生すげぇってばよ!」
「ホントよね!でもどさくさにまぎれてもってこうとしてるんじゃないわよ!」
「よこせ!」
きゃあきゃあ騒ぐ子供たちは、どうやら器にしたスイカが気に入ったらしい。
綺麗にくりぬいてついでに模様まで彫ってあるから、確かに面白いのかもしれない。
ま、俺は全然面白くないんだけど。
折角イルカ先生の作ってくれたものを飛び散らかしちゃってもう!
「あーお前ら。早速課題。ちゃんとそれ観察しときなさいね?今度梨でももってくからやってみな?」
「えぇー!こんなんできねーってばよ!なぁなぁイルカ先生!こんなんどうやるんだってばよ?」
「ふん。…だが確かにこうしてみると緻密な…」
「あ、でもかわいいし…やってみたいです!イルカ先生!」
威厳を持って命じた…ってほどじゃないけど、さっさと俺を無視して子供たちは一斉にイルカ先生を取り囲んで喚きだした。
まったくもう!油断も隙もない!
「はは!サクラはやっぱり女の子だなぁ?いいぞ!」
くっ…!やっぱり…!イルカ先生が子供から教えてっていわれて断れるわけないもんね…。
「へぇーんだ!カカシ先生のバーカ!俺だってイルカ先生におそわるもんねー!」
「うすらとんかち…」
だがこれでイルカ先生が喜んでくれるなら耐えないと…!
…ま、泊まるとか言い出したら上忍の本気で追い出すけどね?
「でもなぁ?これ作ったの半分以上カカシ先生だぞ?」
「えええ!?」
「さすが…上忍か?こんなもん俺だって…」
「へー?凄いですね!」
あら、ばらしちゃったのね。…っていうかイルカ先生の性格的に無理か…。
男連中は分かりやすいけど、サクラも…大概温度差ありすぎでしょ…。
一斉に期待に満ちた視線を向けられて…なによりイルカ先生の視線を感じたら、なにをしたらいいかなんて分かりきっている。
「あー…お前ら、ちゃんと見てなさいよ?」
余ったりんごがあったから、それをつかってささーっと適当に模様を彫ってやった。
「すげぇ!すっげー!」
「く…!素早い…!」
「お花!すごいわ!」
キラキラした視線に、イルカ先生がそっと差し出したもう一個のりんご。
…くっ!この場は仕方ないか…!
「あー…じゃ、もう一回だけね?」
「おう!」「はい!」「…」
…で、当然子供たちが1ヶや2ヶで満足するはずがなく…俺は結局何故か大量にあったりんごを延々と切り続ける羽目になった。
ま、ちょーっと疲れたけど、子供たちが夢中になってる隙に影分身と入れ替わって、イルカ先生独り占めできたからいいんだけどね?
ちなみにできた大量のりんごはイルカ先生が何かに漬けてた。食べ物を無駄にしないなんて、さすがイルカ先生だよね!


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リクエストをいただけたので農家にしてみたり。
中忍に思う様便利に使われる上忍であったとか…!
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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